歯科,再び

さて,歯科用後遺障害診断書の記入法について混乱しやすいことは先日の記事でお伝えしましたが,その原因の一つが記入にあたっての説明が簡素すぎることでしょう。

図の①と②③の区別は割とつきやすいのですが,②と③の違いがよくわからず,どの欄にも〇をつけられているケースを多々見受けます。ここを間違えられてしまうと適正な等級認定ができません。

(はーわや書いちょるんがぶち多いんっちゃ。)

 

①今回の事故前に,喪失または歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を欠損していた歯

②今回の事故により,喪失または歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を欠損した歯

③今回の事故による歯の治療の必要上,抜歯または歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を切除し,歯科補綴を施した歯→②に該当する,今回の事故により喪失または歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を欠損した歯ではないが,今回の事故による歯の治療の必要上,抜歯または歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を切除し,歯科補綴を施した歯

という区別になるのですが,③に該当する歯は事故(の外力)による喪失等ではなくても,「現実にそう失又は著しく欠損した歯牙に対する補てつ」=「歯科補てつを加えたもの」に当たり,後遺障害の対象となります。

では,今回の事故により喪失等をした歯であってもなんらかの事情で補綴ができなかった歯はどのように評価するのでしょうか。「補てつを加え」ていないので対象とならないようにも思えますが,補綴できなかったことに合理的理由があれば,いわゆる「相当」(自賠法施行令別表第二 備考六 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。)として補てつを加えたものと同様に評価できないでしょうか。実質的に考えても,後遺障害の対象は,歯が折れたことであり,補綴を加えたことではないはずです。③に該当する,事故によらず抜歯・切除し補綴した歯に抜歯・切除の理由記載を求めていることからも,事故により抜歯・切除した歯で補綴ができなかったものについては理由が合理的であれば相当評価をすべきと思います。

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吉岡 誠
弁護士法人あさかぜ法律事務所 代表弁護士 「明けない夜はない」を胸に依頼者とともに。 相談の席で弁護士が真摯にお悩みを受け止めることで、心と体の重荷が解き放たれる。 癒えた心で法的助言を聞き、新たな未来の光を見つける。 その後、依頼者と弁護士が共に歩み解決へ。 明けない夜はありません。