後遺障害等級認定時の見落としにご注意ください!(肩関節機能障害など)

 

機能障害の判断は,各関節に複数の運動がある場合,まずは主要運動の可動域を比較することになります。

ところが,この「複数の運動がある場合」の主要運動それ自体が複数ある関節が存在し,一つの主要運動が可動域制限に引っかからなかったことをもって機能障害なしと判断してしまったり,もう一つの主要運動についての判断を忘れてしまったりする場合があるのです。

経験上は,特に,肩関節,股関節において多いように思われます。

たとえば,後遺障害診断書において股関節の可動域がそれぞれ以下のように記入されていたとします(他動値のみ記入,自動値は省略)。

股関節 患側 健側
屈曲 90 115
伸展 5 20
内転 10 45
外転 10 20
内旋 (略) (略)
外旋 (略) (略)

股関節については,屈曲・伸展だけではく,外転・内転も主要運動です(内旋・外旋は参考運動であり,本件では評価対象ではないので省略します)。

ある事案において,上記のような数値で,屈曲・伸展のみをもって判断し,患側(90+5=)95°:健側(115+20=)135° ,患側95°は健側135° の4分の3(101.25° )以下であるから,「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として12級7号と認定された事例があります。

しかし,同じく主要運動である外転・内転をみると,患側(10+10=)20° :健側(45+20=)65° で,患側20°は健側65° の2分の1以下ですから,「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として10級11号が相当です。

実際の事例でも,認定票を確認して外転・内転をすっ飛ばしていることが明白であったことから直ちに異議申し立てを行い,無事10級11号を取得しました。

もし仮に,屈曲・伸展に異常がなく,内転・外転のみに異常があった場合で上記のように外転・内転を無視されてしまうと,本来10級11号と認定されるべきものが,非該当となる恐れもあるわけです。

 

後遺障害等級認定票と後遺障害診断書をよく確認されてみて,おかしいなと思われましたら,一度ご相談ください。

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吉岡 誠
弁護士法人あさかぜ法律事務所 代表弁護士 「明けない夜はない」を胸に依頼者とともに。 相談の席で弁護士が真摯にお悩みを受け止めることで、心と体の重荷が解き放たれる。 癒えた心で法的助言を聞き、新たな未来の光を見つける。 その後、依頼者と弁護士が共に歩み解決へ。 明けない夜はありません。