複視を測定するヘスチャート

吉岡です。こんにちは。

眼の障害の案件は難しい事例が少なくありません。

MRIやXPなどの画像については大量に見ているのである程度は見分けがつきますが,ここで紹介するヘスチャートはなかなかお目にかかることがありません。非該当通知に納得がいかないとのことで当事務所にお越しいただいた案件ですが,こちらも眼科や脳神経内科などの専門書を睨みながら,異議申し立てに際して何か有意な証拠はないか,とっかかりはないかと探しています。

物が二重に見える複視の程度を測定するのがヘススクリーンテストの結果を記載するヘスチャート。

(フォントがショウワモダンな点はご愛嬌)

左の滑車神経麻痺を生じたため滑車神経に支配される上斜筋(眼の向きを変える外眼筋の一つ)が萎縮しています。

複視の障害等級認定基準の一つに,「患側の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されること」というものがあります。では,上記のものがこの基準を満たすかというと……。非常に微妙ですが,患側は5度未満になっています。

ところが,健側の右眼は5度以上ずれています。これをとっかかりに後遺障害等級に認定してもらえないのでしょうか。

両目はその運動に際して常に等しい神経インパルスを受けます(Heringの法則)。患側の眼を動かそうとすると,運動障害を補うためにより多くの神経インパルスが働きます。そうするとHeringの法則により同等の神経インパルスが健側の眼を動かす際にも働くため,健側の眼の運動量は大きくなるわけです。ですので,健側の像が大きくずれるだけでは等級認定に繋がらないことになります。健側の数値をなんとか異議申し立てにつかえないかと丸一日費やしてしまいましたが,とても勉強になりました。

だがしかし,5度未満であっても正面視で複視を残し日常生活にも難儀する(プリズム眼鏡をつけないとなにもできない)現状に非該当はないでしょう。適切な等級を獲得すべく努力します。

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吉岡 誠
弁護士法人あさかぜ法律事務所 代表弁護士 「明けない夜はない」を胸に依頼者とともに。 相談の席で弁護士が真摯にお悩みを受け止めることで、心と体の重荷が解き放たれる。 癒えた心で法的助言を聞き、新たな未来の光を見つける。 その後、依頼者と弁護士が共に歩み解決へ。 明けない夜はありません。