しかし,むち打ちは立派な後遺障害です。適切な後遺障害等級認定手続きをとることにより,将来の治療などに備えての十分な賠償額を獲得することができる12級や14級に該当する可能性のある後遺障害なのです。
等級 | 自賠責限度額 | 裁判基準 後遺障害慰謝料 | 逸失利益 労働能力喪失率,期間 | 裁判基準 後遺障害慰謝料, 逸失利益合計 |
---|---|---|---|---|
12級13号 | 221万円 | 290万円 | 14%,10年以下 | 約660万円 |
14級9号 | 75万円 | 120万円 | 5%,5年以下 | 約195万円 |
非該当 | 0円 | 0円 | 0%,0年 | 0円 |
裁判基準後遺障害慰謝料,逸失利益合計額は平均的な数値(主婦年収約350万円として)を挙げています。12級と14級の違いは下記をご覧ください。また14級と非該当の境目は下記にも述べますように非常に不明瞭で明確な分岐点はありません。しかし,上記表のように14級とされるか非該当とされるかにより約200万円弱の差が出てきてしまいます。
そこで,以下にむち打ちで後遺障害等級を獲得するための準備の仕方などをご説明いたします。
準備すべき資料として客観的な画像所見であるMRIやCT画像などは必須です。
これらに加え,以下の客観的な検査所見を集め,その客観的所見と自覚症状との間の整合性があれば12級獲得の可能性が高まってきます。
以下に,等級認定において重要視されている検査を紹介いたします。
スパーリングテスト(神経学的検査)
スパーリングテストとは,神経根障害について調べる神経学的テストです。被検者の頭を傾けて下方に押し付けると神経根の出口が狭められます。神経根に障害があれば,神経根の支配領域に放散痛やしびれが生じるため放散痛等の訴えの有無を検査します。同様の検査に,ジャクソンテスト等があります。
腱反射テスト
腱反射は被検者の意思に左右されない客観的なものであるため,後遺障害等級認定において重要視される神経所見です。打腱器で腱を叩くと筋肉が動きますが,これは被検者がコントロールすることができないものです。例外もありますが,腱反射に亢進があれば大脳の運動神経から脊髄前角細胞に至る一次ニューロン(神経細胞)に何らかの異常があることを示し,一方で腱反射が低下又は消失している場合は,脊髄前角細胞から神経根,筋肉に至る二次ニューロン(神経細胞)に異常があることを示します。
筋萎縮検査
脊髄前角細胞から筋肉に至る二次ニューロン(神経細胞)に障害を生じた場合,び漫性に又は該当する末梢神経の分布に従い筋が委縮します。これは被検者の意思に左右されない客観的な所見であるため,後遺障害等級認定手続きにおいて重要視されています。
上記の3つの検査は,客観性が高く等級認定手続きにおいても重要視されています。
当事務所では,むちうちの症状がある被害者の方の場合,これらの検査結果を踏まえた後遺障害診断書の作成をお願いし,必要に応じて医師面談を行い意見書の作成をお願いするなど適切な後遺障害等級獲得のためのサポートを全力で行っております。
上記で述べましたように14級と非該当との境目は非常に見えにくく,同じようなケース間でも14級と判断されたり,非該当と判断されたりすることは多々あります。その中でも,以下のようなケースでは残念ながら非該当と判断されることが多いのが現実です。
治療期間が短い(痛くないと判断される)
1か月以上の治療ブランクがある(同様に痛くないから通院しないと判断される)
自覚症状が一貫しない(不定愁訴,単なる故意の誇張に過ぎないと推定される)
しかし,これらに該当する被害者の方の中には,
お仕事が忙しく通院の時間が取れない方
様々な痛みをうまく医師に説明できず結果的に不定愁訴になってしまっている方
保険会社から治療費を打ち切るといわれて泣く泣く治療期間を短く打ち切った方
が多数おられることが容易に想像できます。
痛くて通院しようにも仕事が終わった頃には既に整形外科が閉院していて通院できない。
医師にどう伝えていいかわからないけどとにかく痛いのに保険会社が治療費をこれ以上出せないといって示談を迫ってくる。
といったお悩みをお持ちの方に方こそ,事故直後から専門知識を有する弁護士のサポートをお受けいただき,適切な後遺障害認定手続きをとっていただきたいと思います。